長野県にある横谷渓谷(よこやけいこく)は八ヶ岳の西側、避暑地としても人気の蓼科(たてしな)高原にあります。渓流沿いに続く全長約6キロメートルの散策路を歩けば、マイナスイオンたっぷりの自然をめでながらのハイキングが楽しめます。すぐ近くには、日本を代表する画家・東山魁夷(ひがしやまかいい)がモデルとした風景「御射鹿池(みしゃかいけ)」も。まさに絵になる絶景の数々に出会えます。
風景以外にも、長野名物のそばが楽しめるお店や、散策の疲れを癒せる温泉もあり、1日満喫できる場所。注意点を押さえながら、絶景ポイントへの歩き方のコツをご紹介します。
豊かな自然と出会う場所、横谷渓谷
蓼科高原にある横谷渓谷の標高は、高いところでおよそ1,500メートル。夏は避暑、秋は紅葉と多くの観光客が訪れる場所です。蓼科高原には横谷渓谷以外にも、リゾート地として知られる白樺湖や、高原の自然を堪能できるドライブロード「ビーナスライン」の他、北八ヶ岳ロープウェイなど、自然にまつわる施設や観光地を多く有しています。
首都圏から約3時間で気軽にアクセス
東京から向かう場合は、中央自動車道を利用します。山梨県を越え、長野県「諏訪南」ICを降りたら、八ヶ岳ズームライン、エコーライン、メルヘン街道を通り、横谷峡の看板を右折して「横谷峡入口」駐車場に到着。約3時間の道のりです。
ハイキング中は、飲み物や飴など軽い行動食を持ち歩くようにしましょう。横谷渓谷周辺に自販機程度ならあるものの、コンビニなど商店はないため、「諏訪南」ICを降りてから渓谷到着までに準備を済ませておきます。
※積雪や雪崩による交通の危険を防止するため、11~4月はメルヘン街道を含む一部区間が通行止めとなります。情報を確認の上お出かけください。
冬季道路通行止めの情報(茅野観光ナビ)
今回は、地図右側の「横谷峡入口」駐車場に停め、乙女滝・霧降の滝・王滝といったさまざまな滝をめぐったのちに、横谷観音展望台まで向かう往復およそ3時間のコースを散策。さらに、駐車場に戻り、名画家・東山魁夷がモデルとした「御射鹿池」周辺へは車で向かいます。
約3時間のハイキングは長いと感じる方には、横谷峡入口駐車場から乙女滝までの往復約10分のコースや、霧降の滝まで往復約50分のコースがおすすめです。特に乙女滝までは、階段が整備され、それ以外もゆるいアップダウンのみ。観光バスもよく訪れる歩きやすいルートです。体力に合わせて終着点を決めてみてください。
動きやすく、寒暖差に備えた服装で
気軽なハイキングながらも、標高約1,500メートル級の山中に入るため、備えは必要です。足元は歩きやすいスニーカーやトレッキングシューズを、ズボンはジーンズよりもストレッチの利くものをおすすめします。朝晩の寒暖差も年間を通じて10度前後と大きく、特に谷間は光が届かず肌寒いので、脱ぎ着しやすい上着があると便利。飲み物や脱いだ上着を入れても両手が空くよう、リュックを使用しましょう。
写真は、紅葉シーズンである10月下旬に訪れた際のもの。例年この時期は、朝晩に0度前後まで冷え込み、太陽がさせば最高15度くらいまで気温が上がります。冬場は滝や渓流が凍るほどの寒さに。寒さ対策はもちろん、足元の積雪や凍結にはくれぐれも備えましょう。
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美しい滝と自然を堪能!往復約3時間のハイキングへ
概要をおさえたところで、さっそく車を置いて、散策に出かけましょう。横谷峡入口駐車場の利用は無料。昼頃には満車になることが多いので、早めに向かいます。公共トイレがすぐの場所にあるため、お手洗いに立ち寄るならここで。しばらくは車道を歩くので、車に気を付けて進みます。
豪快に流れ落ちる「乙女滝」
歩き出して2分ほどで「木戸口神社」が見えてきます。全国にある諏訪大社の総本社である「諏訪大社」の小宮の1つで、由緒正しい神社です。まずは参拝して、神様にご挨拶を。
参拝後は、木戸口神社を正面に右側の道路を進みます。歩くこと約1分。道の右手に見える、乙女滝の看板を目印に、川へと階段を下っていきます。
階段を下ると、落差約15メートルの迫力ある乙女滝が! 本日最初の絶景スポットです。特に雨の降った翌日は一層勢いよく水が流れ落ち、岸辺に立っていても細かな飛沫が飛んでくるのを感じます。
乙女が滝に打たれて祈ったことからその名がついたそうで、「願い事が叶う滝」とも言われているのだとか。午前中の早い時間は日が入りにくいため、写真に収める場合は昼前後から午後の撮影がおすすめです。復路で同じ道を通るので、時間が早い場合は帰りにも寄ってみましょう。ちなみに写真は帰り道、13:00過ぎのものです。
マイナスイオンをたっぷり感じる「霧降の滝」へ
乙女滝から再び階段を上り道路に戻ると、「横谷温泉旅館」が見えてきました。看板の矢印に従い、旅館正面を奥まで通り抜けていきます。
※乙女滝から川沿いに横谷温泉旅館まで進む道は、台風の影響で通行止めとなっています(2019年11月現在)。
横谷温泉旅館を過ぎると本格的な山道へ。少しの間は平たんですが、ゆるやかに上り道になっていきます。木々が光を遮り日が当たらず、足元がぬかるみやすい場所なので注意して進みましょう。
歩くこと約10 分。遊歩道の随所に置かれる看板に従って進むと、見えてくるのは「霧降の滝(きりふりのたき)」です。
看板には、「マイナスイオン指数20,000個」の表示も。これは1立方センチメートルあたりのマイナスイオンの個数で、一般的には200個ほどなのだそう。横谷渓谷の道路沿いでも約1,500個ということで、霧降の滝の指数がいかに高いかが分かります。
こちらが落差約5メートルの霧降の滝。先ほど訪れた乙女の滝のような豪快さはないものの、左右に分かれて流れる水は風情がたっぷり。渓谷の底にあり光が入りづらいのも、深い美しさを際立てます。マイナスイオンを全身に浴びながら深呼吸をしたくなるようなスポットです。
ゆるやかに登り「王滝」を目指す
霧降の滝を過ぎると少しずつ道が細くなっていき、ゆるやかな上り坂が続きます。自然を眺めながらゆっくりと進めば、苦になるほどの傾斜ではありません。
霧降の滝から約15分。鷲が羽根を広げたように見える「鷲岩」からすぐの分かれ道では、左側の「王滝展望台・横谷観音」方面へ進みます。
さらに歩くこと約5分。川の水が数十メートルにわたり、1枚の大きな岩の上を流れる「一枚岩」と呼ばれるスポットが見えてきます。霧降の滝に及ばずとも遠くない、マイナスイオン指数は15,000。リフレッシュするような気持良さです。
一枚岩を過ぎるとすぐに上り階段へ。落ち葉に気をつけながら進むと、日が届きやすくなっていき、標高が上がっていくのを感じられます。
王滝と横谷観音の分岐が見えてきたら、散策のゴールまであと少し! まずは100メートル先にある王滝に向かいます。土の地面から格子状の道に変われば、もう間もなくです。
王滝がしぶきを上げる絶景がこちら! 落差約21メートルの雄々しく流れる滝を木々が額縁のように囲み、まるで絵画作品のよう。周りの風景も含めた全景を楽しんでみてください。10月半ばから11月初めにかけての紅葉シーズンには、水流と色づいた葉とのコントラストが圧巻です。
王滝の目の前にある東屋は、ビュースポット。椅子もあるので、のんびり一休みしながら眺めることができます。
クライマックス「横谷観音展望台」を目指して、一気に上り坂!
王滝を堪能したら分岐まで戻り、今度は「横谷観音展望台」方向へ。歩く距離は500メートル程度ですが、ここからは上り坂が今までよりも険しくなります。しかしその分、登るほどに日がよく差し込み、山道の景色は疲れを忘れさせてくれるようです。紅葉シーズンには、このあたりが特に鮮やかに色づきます。
急な場所には階段が整備されています。チェーンを掴んで進むほどの安定感はないので、足元が心配な方はストック持参が便利でしょう。
登った先には観音様が奉られたお堂のある「横谷観音」が見え、頂上に到着。山頂からの眺望を楽しむための展望台は、すぐそばです。
「横谷観音展望台」へ抜ければ、蓼科高原の稜線に横谷渓谷が影を作り出す絶景が! 左手には王滝が遥か下に見え、登頂を実感できるはず。紅葉時期には黄・赤・オレンジと色づく木々を一望することができます。美しい景色に、登頂の達成感もひとしおです。
展望台より徒歩約5分のところにある、横谷観音駐車場にもウッドデッキの展望台が。眼下に茅野(ちの)市街地を望み、横谷渓谷側を見るのとはまた違った風景を楽しめます。
ここから同じ道を戻りますが、復路は下り坂のため、立ち止まらずに歩けば1時間程度で下山可能。もしくは、横谷観音駐車場の端に停車する路線バスに乗れば、ふもとまで約10分で戻ることもできます。ただし、1日に3本しかないので、時間を見計らって利用しましょう。駐車場内にはしっかりとしたお手洗いも用意されているので、下山前に立ち寄れば安心です。
あの名画の風景、「御射鹿池」へ
ふもとの横谷峡入口駐車場に戻り、車を走らせることおよそ10分。続いて向かうのは、近年人気の観光スポット「御射鹿池」です。池のすぐ横に30台ほどの駐車場があり、利用は無料。紅葉の季節は混雑していますが、回転は早いので、満車の場合には少し待ってみましょう。
こちらが、御射鹿池。標高約1,500メートル付近にひっそりとたたずむ池の水面には、木々が鏡のように映り込み、多くの人を惹きつけています。そのうちの一人、東山魁夷の名画『緑響く』は、白馬が御射鹿池に映る様子を描いた作品と言われています。まさに絵になる絶景です。
風や日の光など、自然条件によって見え方が変わるのも魅力の1つ。今回撮影した秋頃は、柔らかい日差しが紅葉をより美しく映し出すため、日の高い日中の観賞がおすすめです。
こちらは朝7:00頃の風景。夏場は日差しが強く日中にはまぶしく感じられるほどですが、朝は光が弱く風も吹きにくいため、季節を問わず幻想的な映り込みが期待できますよ。心静かに、名画に思いを寄せるひと時です。
渓谷最上流の滝にも立ち寄り!
先ほどの渓谷の遊歩道散策で向かいづらかったもう1つのスポットにも、御射鹿池からなら徒歩約10分で向かうことができます。「明治温泉」の看板を頼りに舗装路を進み、温泉の左手から遊歩道まで伸びる長い階段を降りましょう。急こう配なので、手すりをもってゆっくりと下ります。
たどり着くのは、「おしどり隠しの滝」。横谷渓谷で最も上流に位置する滝で、大きな岩の合間から勢いよく流れだす水の迫力は抜群です。岩や岸にむす苔も、まるで一緒になって風景を作り出しているようです。
滝に近づけるよう、川には橋がかけられており迫力の水量を間近で見られるようになっています。橋の上は、滝全体をバランスよく収められる一番の撮影スポットです。
体を動かした後にうれしい周辺立ち寄りスポットへ
横谷渓谷沿いのトレッキングや森林浴を楽しんだら、動かした体の疲労を癒しましょう。周辺には、温泉やグルメなど、まだまだのんびりと楽しめるスポットが揃っています。
絶景を眺める、黄金の湯「横谷温泉旅館」
まずは、温泉で汗を流します。人気の温泉宿「横谷温泉旅館」は、大正12年創業の老舗旅館。宿泊だけでなく、日帰り入浴も楽しめます。ハイキング中、乙女の滝から霧降の滝へ向かう際にも付近を通過するスポットのため、道中に立ち寄ることも、あとから車で再訪することも可能。車での日帰り利用は、第二駐車場を利用できます。